高齢者の銀行情報、本人同意なしで福祉機関へ?新制度を考える

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高齢者本人の同意なしで

2026年8月には日本経済新聞が、厚生労働省と金融庁が、認知機能の低下が見られる高齢者について、銀行などの金融機関から地域包括支援センターなどの福祉機関へ、本人の同意なしで連絡できるようにする方向で検討していると報じました。

金融庁は年内にも個人情報保護に関する指針を見直す方向とされています。

目的は、高齢者を特殊詐欺などの被害から守り、必要に応じて成年後見制度などの支援につなげることです。

一見すると、とても心強い仕組みに思えます。

物忘れが増えた高齢者が、知らないうちに大金を振り込んでしまう。

そんなとき、日頃から預金の動きを見ている金融機関が異変に気づいて地域包括支援センターなどにつないでくれれば、被害を防げる可能性があります。

実際、特殊詐欺による被害は深刻な状況が続いています。

  • 警察庁によると、2025年の特殊詐欺の認知件数は43,000件、被害額は約3,257億円に上りました。
  • 65歳以上の高齢者の被害は14,232件、被害額は832.4億円で、特殊詐欺全体の被害額の59.0%を占めています。

銀行などが窓口で異変に気づき、被害を防ぐ「水際対策」には、確かに大きな意味があるでしょう。

ただ、私はこのニュースを見て、もう一つ考えておきたいことがあると思いました。

「本人の同意なしに情報を共有する」という仕組みならば、誰がどのような基準で、どんな情報を共有するのかを慎重に見ていく必要があるのではないか。

ということです。

目次

高齢者を守るための制度。その一方で考えておきたいこと

もちろん、今回の制度の目的は、高齢者を守ることです。

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や権利擁護、介護予防などを担う公的な相談機関です。厚生労働省も、認知症が疑われる場合の相談先の一つとして地域包括支援センターを案内しています。

銀行が高齢者の異変を察知し、必要な支援につなぐこと自体は、社会的に意義のある取り組みだと思います。

ただし、金融機関が高齢者の資産を扱う側であることも、同時に忘れてはならないと思います。金融機関は、預金だけでなく投資信託などの金融商品も販売しています。そして過去には高齢者への金融商品の販売をめぐって、適切な手続きが行われなかった事例もありました。

ゆうちょ銀行で問題になった高齢者への投資信託販売

その一例が、2019年から2020年にかけて明らかになった、ゆうちょ銀行などによる高齢者への投資信託販売をめぐる問題です。

ゆうちょ銀行と日本郵便は2020年3月、高齢顧客への投資信託販売において、本来必要な「勧誘前の管理者承認」を怠っていたケースが19,591件(対象顧客15,087人)に上ったと公表しました。あわせて、高齢顧客約22万人を対象にアフターフォローを実施したことも明らかにしています。

同じ時期、金融庁の審議会でも、高齢者への金融商品販売のあり方が議論され、身体的な衰えだけでなく認知能力の変化も踏まえた基準づくりが検討されました。

これは、「銀行は高齢者を守る側だから問題ない」と単純に考えることができない理由の一つです。

もちろん、特殊詐欺グループと銀行を同じものとして扱うことはできません。特殊詐欺は犯罪です。一方、銀行による金融商品の販売は、法律や規則のもとで行われる正規の金融サービスです。ここは明確に区別する必要があります。

ただし、高齢者の判断力や理解力が低下している可能性がある場合、金融機関側にも慎重な対応が求められるという点は共通しています。

金融庁も、高齢顧客について、身体的な衰えだけでなく、短期間で投資判断能力が変化する場合があるとして、適合性の原則に基づいた慎重な勧誘・販売や、販売後のフォローアップを金融機関に求めています。また、80歳以上を目安とする高齢顧客については、原則として当日の受注を行わず、翌日以降に受注するなど、より慎重な対応が案内されています。

「守ってもらう」だけでなく、家族も資産を確認する

今回の制度を見て、私が特に大切だと思ったのは、金融機関だけに高齢者の資産管理を任せないことです。

銀行が異変に気づいてくれる可能性がある。福祉機関につないでもらえる可能性もある。それは、とてもありがたいことです。でも、それだけで十分とは限りません。

  • 親がどんな金融商品を契約しているのか
  • 定期預金はいくらあるのか
  • 投資信託や保険にどのくらいのお金を入れているのか
  • 最近、知らない会社から電話や郵便が届いていないか

こうしたことを家族が把握しておくことも重要だと思います。特に、親が一人暮らしをしていたり、子どもが遠方に住んでいたりすると、変化に気づくまでに時間がかかります。

私自身、実家の資産をめぐって、大きな損失を経験しました。その経験から感じたのは、「大手だから大丈夫」「有名な金融機関だから安心」と考えてしまうことの危うさです。

金融機関をすべて疑う必要はありません。だからといって、すべてを金融機関に任せてしまうのも違う。その間にある、ちょうどよい距離感を考えておくことが大切なのだと思います。

私自身が経験した、高齢の両親と金融機関をめぐる問題

私の両親も、かつて金融機関との取引をめぐって大きな問題を経験しました。詳しい経緯については、こちらのnoteにまとめています。

👉 大手だからと安心しないで。高齢の両親が「優良顧客」という名の「カモ」にされた日と、その後の結末。
👉 続編はこちら

個人的な経験ではありますが、親のお金を家族がどこまで把握しておくべきなのかを考えるきっかけになりました。

高齢者を守る制度だからこそ、透明性が大切

今回の金融機関と福祉機関の連携は、高齢者を特殊詐欺から守るための取り組みです。その目的そのものは理解できます。

一方で、本人の同意なしに情報が共有される仕組みだからこそ、次のような点について、分かりやすいルールが示されることが重要だと思います。

  • どのような状態を「認知機能の低下」と判断するのか
  • どのようなケースで情報共有を行うのか
  • どのような情報が福祉機関に伝えられるのか
  • 情報共有後、本人や家族にはどのように説明されるのか
  • 誤った判断があった場合、どのように訂正できるのか

個人情報については、そもそも第三者提供には本人同意が原則ですが、生命・身体・財産の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合には、例外的に同意なしで提供できる場合があります。

今回の制度についても、「高齢者を守るため」という目的だけでなく、本人の権利やプライバシーをどう守るのかという視点が必要なのだと思います。

親の資産を守るために、家族ができること

銀行の新しい仕組みを頼りにすることは、決して悪いことではありません。むしろ、特殊詐欺の被害がこれほど深刻になっている現在、金融機関と福祉機関が連携して高齢者を支える仕組みには、一定の役割があるでしょう。

ただ、それだけに任せきりにするのではなく、家族もできる範囲で親のお金の状況を確認しておく。

  • たまには実家に顔を出す
  • 通帳や契約書を一緒に確認する
  • 知らない金融商品が増えていないか確認する

そして、親自身が「何かおかしい」と感じたときに、すぐ相談できる相手をつくっておく。そうした日頃の備えも、高齢者の資産を守るためには大切なのではないでしょうか。

ご両親の資産を守れるのは、他人ではなく、あなたです。

銀行だけでも家族だけでもありません。

それぞれの立場から高齢者を支える仕組みをつくり、その仕組みが適切に運用されているかを、私たち自身も見ていくことが必要なのだと思います。

高齢者本人の同意なしで

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